SS-025_第**25話_使ってみる**
翌日。
体育館の一角で、奏多と栞は向かい合っていた。
「で、考えてきた?」
栞に聞かれ、奏多はスマフォの画面を開く。
「一応……」
昨日渡されたスペシャルの一覧。
何度か見返した跡でもあるように、奏多は迷わず大剣の項目を開いた。
「最初に俺が街のモニターで見かけた時に、黒瀬先輩が使ってたのが……破砕撃、でしたっけ」
「うん」
「あとは……一閃と、超重撃」
三つとも大剣のスペシャルだ。
「この辺、使ってみたいです」
「じゃ、やってみよっか」
栞がすぐに立ち上がる。
「まずは破砕撃から!」
「はい」
ゴーグルをつけ、奏多はグリップを握った。
大剣が生成される。
向かいでは栞も武器を構えている。
破砕撃。
昨日、説明を読んだ時には強そうに見えた。
相手の武器耐久を大きく削る。
単純で、分かりやすい。
奏多は大剣を構えた。
「いきます」
振る。
だが――。
何も起こらない。
「……あれ?」
奏多は大剣を止めた。
破砕撃のエフェクトは出ていない。
それなのに、表示された大剣の耐久はしっかり減っていた。
「減ってる……」
「失敗しても一回使ったことになるよ」
「うわ……」
あと二回。
奏多は大剣を構え直した。
さっきの振りを思い返す。
速ければいいわけじゃない。
大剣が最も威力を発揮する速度。
そこへ合わせる。
もう一度。
大剣が振り抜かれる。
今度は――乗った。
栞の武器と激突した瞬間、大きなエフェクトが弾けた。
「おおっ……!」
栞が一歩引く。
その手の武器には、はっきりと損耗が出ている。
奏多はすぐ自分の大剣も確認した。
こちらも傷んでいた。
「相手だけじゃないんだ……」
「でも、ちゃんと当たると強いでしょ?」
「うん……」
強い。
ただ、雑には使えない。
次は一閃。
再び大剣を構えた奏多に、栞が向き合う。
「これ、一回当てればいいんですよね」
「ガードされずにね」
「……ですよね」
奏多は大剣を振った。
速い。
大剣本来の威力が乗る速度を越えて、ブン、と振る。
栞がガードした。
「……。」
もう一度。
ブン。
また防がれる。
当たったところで大した威力にはならない。
普段なら、こんな振りを警戒する理由は薄い。
けれど今は違う。
これを一発通せば、一閃が使える。
だから栞は防ぐ。
「これも止めるのか……」
奏多が小さく呟く。
もう一度、大剣を動かす。
栞がそれを見る。
奏多は振る。
栞がガードへ動く。
その動きを見て、奏多は軌道をずらした。
ブンッ。
大剣の先が栞を捉える。
威力は小さい。
だが――。
「あ」
表示が変わった。
《一閃》
使用可能。
「出た!」
奏多はすぐに発動する。
構えた大剣が――走る。
自分で振った時とは明らかに違う。
一気に理想速度の斬撃が放たれる。
だが。
栞は横へ逃れていた。
空振り。
「速っ……!」
思わず声が出た。
それから、何もないところを振り抜いた大剣を見る。
「……これでも避けられるのか」
「出せたからって、当たるとは限らないからね」
「そりゃそうか……」
次は超重撃。
「これはジャストガード、ですよね」
「そう」
奏多は大剣を防御位置へ持っていく。
栞がブレードを構えた。
「いくよ」
「はい」
栞が踏み込む。
奏多はその攻撃に合わせてトリガーを引いた。
――遅い。
ブレードがそのまま奏多を捉える。
「ぐっ!」
判定音。
奏多は思わず一歩下がった。
「惜しい!」
「普通にガードにもならないんだ……」
ジャストガードを狙わなければ、防げたかもしれない。
けれど、狙った。
だから食らった。
「もう一回お願いします」
「うん」
奏多は構え直した。
栞のブレードを見る。
動き出す。
まだ。
近づく。
――今。
トリガー。
鋭いエフェクトとともに、栞のブレードが弾かれた。
「……!」
奏多の表示が変わる。
《超重撃》
「きた!」
すぐに発動。
大剣が強く光る。
ほんのわずかな溜め。
そして、振り下ろす。
その時にはもう、栞はそこにいなかった。
大剣が空を切る。
「……外した」
しかも振り終わった奏多は、すぐには動けない。
栞は少し離れたところからそれを見ていた。
「当たったらすごいけどね」
「当てるまでが大変だ……」
強い。
どれも、間違いなく強い。
でも、選べば強くなるわけじゃない。
奏多は一覧へ戻った。
「あと……」
指が止まる。
「ガトリングのクイックスピンってやつ」
「使ってみる?」
「はい」
大剣を収納。
ガトリングを生成する。
栞が距離を取った。
奏多は銃口を向ける。
クイックスピン。
発動した瞬間、ガトリングの回転が一気に上がった。
「!」
撃つ。
栞が横へ逃れる。
その先へ銃口を振る。
栞はさらに進路を変えた。
奏多も追う。
撃てる。
すぐ撃てる。
それだけで、相手の動きが変わる。
「これ……」
奏多はガトリングを構えたまま、栞を見た。
さっきまでの大剣とは、強さの形がまるで違う。
しばらく試したところで、栞が手を上げた。
「はい、そこまで!」
奏多もガトリングを下ろす。
「スペシャルって、強いけど……」
そこで言葉が止まった。
栞がにこっとする。
「じゃ、次いくよー」
「はい」
栞がニンジャを構えた。
「手裏剣流星群!」
「え」
栞の周囲に、大量の手裏剣が現れる。
「ちょ――」
少し離れたところ。
いつからかこちらを見ていた岡野が、わずかに俯いた。
「うぅ……」