「なんすかー?」
呼ばれた森下が、部室の奥から返事をした。
黒瀬が奏多を示す。
「結城の相手してやって。」
「ん?」
森下が奏多を見る。
奏多も森下を見る。
二人は初対面だった。
「……よろしくお願いします。」
少し緊張しながら、奏多が頭を下げる。
「おう! よろしく!」
森下は明るく返した。
その一方で、奏多と一緒に来た男子も、別の部員に声をかけられていた。
「僕もやっていいんですか?」
「もちろん。」
男子は少し驚いたあと、嬉しそうに頷いた。
奏多は森下と。
男子は別の部員と。
それぞれ別の場所へ向かう。
「じゃ、またあとで。」
「うん。」
二人はそこで別れた。
奏多は競技機の準備を始める。
向かいでは森下も手慣れた様子で準備を進めていた。
「昨日が初試合だったんだって?」
「はい。」
「じゃ、気楽にいこうぜ。」
その軽い調子に、奏多も少しだけ肩の力を抜いた。
やがて、二人の武器構成が表示される。
奏多は――
ブレード。 シールド。 ライトシューター。
対する森下は――
ランス。 大鎌。 ブレード。
森下はその中からランスを選んだ。
どこか楽しそうだった。
二人が向かい合う。
開始のカウントが始まった。
奏多が構える。
森下の手元にはランスが生成されていく。
そして――
《START》
森下はすぐには飛び込まず、生成されたランスを軽く構えた。
少し動かし、感触を確かめる。
(実戦で使うの初めてなんだよな)
正面の奏多を見る。
そして、一気に踏み込んだ。
ランスの穂先が真っ直ぐに伸びる。
「うわっ!」
奏多が慌てて身体をかわした。
だが、森下は止まらない。
すぐにランスを引き、次の突きを放つ。
狙いは――奏多のバッテリー。
奏多は身体を引いてかわす。
(惜しい!)
森下はさらに追った。
もう一度。
また、バッテリーへ。
奏多が避ける。
さらに突く。
やはり同じ場所。
「またそこ……?」
さすがに奏多も気づいた。
「くっそ、当たんねぇ!」
森下は悔しそうにランスを引く。
狙いはすっかり露骨になっていた。
それでも、森下は攻めるのをやめない。
距離を詰める。
奏多は後退する。
一歩。
また一歩。
ランスの穂先が迫った。
「まずっ……!」
奏多はライトシューターへ切り替える。
その間にも森下は来る。
「うわっ!」
奏多は慌ててライトシューターを構え、そのまま連射した。
狙いを定めている余裕などない。
ただ、迫ってくる森下へ向かって撃つ。
森下もランスで射撃に対応する。
何発もの弾が飛ぶ。
その中の一発が――
森下のバッテリーに命中した。
直後。
ランスが破壊される。
「え。」
森下が止まった。
「……え。」
奏多も止まる。
一瞬、妙な間ができた。
森下が奏多を見る。
「……今の狙った?」
「いや……」
奏多はライトシューターを持ったまま答える。
「適当に撃ちました。」
「だよなぁ。」
森下はちょっと悔しそうだった。
森下は武器選択を開く。
破壊されたばかりのランスは、もう選べない。
残るのはブレードと大鎌。
「じゃあ、こっち使ってみよ。」
森下が大鎌を選択した。
グリップから長い柄が伸び、大きな刃が展開されていく。
それを見た奏多の顔が、わずかに曇った。
「うわぁ、大鎌かぁ……。」
昨日の試合で苦戦させられた武器だ。
だが――
「……ん?」
奏多が眉をひそめる。
何かがおかしい。
正面から見ている奏多には、森下の手元から大鎌の全体までよく見えていた。
上下が逆だ。
しかし、森下は気づいていない。
そのまま大鎌を振る。
そして――振った瞬間。
「……あれ?」
森下の動きが止まった。
大鎌を見る。
手元を見る。
「あ、逆か。」
グリップを百八十度持ち替える。
その隙に、奏多はライトシューターを森下へ向けた。
「ん?」
発砲。
「ちょ、待っ――!」
何発かが森下に命中する。
奏多はそのまま撃ちながら後ろへ下がった。
森下が大鎌を持ち直す間にも、距離を取っていく。
ようやく森下が大鎌を正しく構えたときには――
奏多はすでに遠い。
大鎌を構えた森下は、離れてしまった奏多を見て呟いた。
「……離れすぎた。」