森下が大鎌を構え直す。
その正面には、十分に距離を取った奏多がいた。
奏多の手にはライトシューター。
狙いを定める。
「……!」
光弾が飛ぶ。
森下は大鎌を動かして対応しながら、奏多との距離を詰めようと一歩踏み出した。
だが、その一歩を待っていたように次が来る。
森下が対応する。
その間に、奏多は一歩下がった。
もう一歩、森下が前へ。
また撃たれる。
また奏多が下がる。
「うーん……」
森下は大鎌を手にしたまま、奏多との距離を見た。
(この距離はキツいな……)
大鎌は届かない。
近づこうとすれば撃たれ、対応している間にまた離される。
森下は手元の大鎌をちらりと見た。
「これは一回やめよ」
大鎌が消える。
すぐにスマホを操作し、別の武器を選択する。
生成されたのは――ランス。
奏多はそれを見ても、すぐにライトシューターを撃った。
光弾が森下へ飛ぶ。
だが、今度の森下は違った。
ランスで光弾を受ける。
そのまま、一歩前へ。
「!」
奏多がもう一発。
森下は防ぐ。
さらに一歩。
奏多が下がりながら撃つ。
それもランスで受け止め、森下はまた距離を詰める。
さっきランスを使ったときのように、バッテリーばかりを狙ってはいない。
ランスそのもののガード性能を使って、正面から奏多の射撃を押し切ろうとしている。
奏多はさらに一発撃った。
だが、もう森下はかなり近い。
「……」
奏多は手元のライトシューターを見る。
(ちょっと撃ちすぎたな……)
このまま撃ち続けるのはまずい。
(温存しよう)
ライトシューターを解除。
代わりに選んだのはシールドだった。
生成されたシールドを前に構える。
(少し様子を――)
考え終わるより先に、森下が踏み込んだ。
ランスが来る。
ガンッ!
「!」
シールドで受け止めた。
続けて二発目。
ガンッ!
これも防げる。
奏多の表情から、わずかに力が抜けた。
――守れる。
少なくとも、ランスの攻撃を正面から受け止めることはできる。
だが。
三発目。
ガンッ!
「……え?」
シールドの耐久が、一気に減った。
奏多が表示を見る。
その一瞬にも、森下は止まらない。
ガンッ!
さらに突き込まれたランスがシールドにぶつかる。
表面に亀裂が走った。
「えっ」
もう一突き。
次の瞬間。
シールドが砕け散った。
「うわっ!」
守るものを失った奏多へ、そのままランスの穂先が伸びる。
HIT。
奏多は距離を取るように後ろへ下がった。
シールドは破壊された直後だ。すぐには再生成できない。
なら――。
奏多はスマホを操作する。
選んだのはブレード。
手元にARの刃が生成される。
「お」
森下が声を上げた。
奏多のブレードを見る。
それから、自分のランスを見る。
少しだけ笑った。
「じゃあ、ちょっとはいいとこ見せとこうかな!」
ランスを解除する。
森下もスマホを操作した。
選択したのは、同じブレード。
生成された刃を構える森下。
奏多もブレードを構え直す。
二人が、同じ武器で向かい合った。
森下の指が、もう一度スマホを操作する。
《OVERCLOCK》
表示された文字に、奏多が目を留めた。
「?」
その瞬間。
森下が一気に踏み込んできた。
「うわっ!」
鋭い斬撃。
奏多は慌ててブレードを合わせる。
間に合った。
――と思った直後には、もう次が来ている。
奏多も必死に腕を振った。
速く。
もっと速く。
森下のブレードに合わせて――。
「!?」
おかしい。
腕は動いている。
相手の攻撃間に合うように振っている。
なのに。
手元のARブレードが、その動きにまともについてこない。
わずかに遅れて刃が動く。
その遅れを、森下のブレードが抜けた。
HIT。
「っ!」
さらに森下が斬り込む。
奏多はまた腕を振る。
今度こそ合わせようとする。
だが、やはり遅れる。
自分の腕と、そこにあるはずの刃が噛み合わない。
(ARが……ついてこない!)
森下はそのまま次の動作へ移った。
「もういっちょ!」
スマホを操作する。
《連撃》
表示が浮かぶ。
「え?」
森下が踏み込んだ。
ブレードが高速で振られる。
一振り。
なのに――攻撃判定が二重に走る。
奏多は必死にガードしようと腕を動かした。
だが、間に合わない。
HIT。
続けて、HIT。
森下の攻撃が止まらない。
奏多もブレードを振る。
けれど、速く振れば振るほどARの刃が遅れる。
防ごうとしているのに、防げない。
そして。
森下が最後の一撃を振り抜いた。
HIT。
奏多のGBが――ゼロになる。
《K.O.》
試合終了の表示が浮かんだ。
森下はブレードを下ろすと、いつもの調子で笑った。
「おつかれ!」
奏多は動けないまま、自分の手元を見ていた。
さっきまで握っていたブレードは、もう消えている。
腕は動いた。
間に合うはずだった。
なのに、ARの刃だけがついてこなかった。
それに、最後の攻撃。
一回振ったはずなのに、二回当たった。
奏多はようやく顔を上げた。
「……今の、何ですか?」