ガトリングの銃口が火を噴く。
しかし――
弾が出ない。
「……あれ?」
奏多はもう一度引き金を引いた。
やはり、何も出ない。
「まずいまずい!」
視線の先では、相手が大鎌を振りかぶっている。
奏多は慌てて武器を切り替える。
ガトリングが消え、大剣が生成された。
間に合った――と思った瞬間。
大鎌が振り抜かれる。
奏多の身体を刃が通り抜け、視界にダメージ表示が走った。
「うわっ!」
奏多はたたらを踏む。
すぐに体勢を立て直し、大剣を構えた。
「よし……!」
相手がこちらを見る。
その口元が、わずかに笑った。
「……!」
奏多はその意味を考えるより先に、前へ出た。
「このぉ!」
大剣を振りかぶる。
相手は逃げない。
むしろ、ほんの少しだけ距離を取って大鎌を構えた。
その構えを見て、奏多の頭に最初の攻防が蘇る。
――大鎌に、大剣は不利だ。
「うぅ……」
分かっている。
でも、ここで引いたら攻められない。
「……行く!」
奏多は踏み込んだ。
大剣を振り下ろす。
その瞬間――
カァンッ!
「えっ!?」
大剣が弾かれた。
大鎌ではない。
いつの間にか相手の手元に現れていたシールドが、大剣の一撃を正確に受け止めている。
「ジャストガード……!」
奏多が目を見開く。
相手はすぐさまシールドを構え直した。
「まだっ!」
奏多は横薙ぎに大剣を振る。
カァンッ!
まただ。
シールドが、寸分違わぬタイミングで大剣を受け止める。
「うそぉ!?」
直後――
パキィンッ!
大剣に亀裂が走った。
「え?」
次の瞬間、大剣は光の粒となって砕け散った。
「武器、壊れた!?」
観客からも歓声が起こる。
その中で、栞が思わず声を上げた。
「そう来るかー!」
驚きと悔しさの混じった声だった。
奏多は一瞬だけ呆然としたが、すぐに顔を上げる。
「……武器変えよう!」
中央のリングが光る。
次に奏多の手に現れたのは、ブレード。
ほぼ同時に、相手も武器を切り替える。
現れたのは――ガトリング。
「また変えた!」
観客から声が飛ぶ。
「スタート!」
合図と同時に、ガトリングが連射を始めた。
奏多は横へ飛ぶ。
一発。
二発。
三発。
弾丸が次々とすり抜けていく。
奏多は走る。
また避ける。
さらに避ける。
「速い速い!」
栞の実況が飛んでくる。
「……!」
奏多は思わず笑った。
さっきまで大剣で攻めあぐねていたのが嘘みたいだ。
避けて、走って、隙を探す。
次の弾をかわした瞬間――
「そこだ!」
一気に踏み込む。
ブレードを振り抜いた。
ズバッ!
命中。
「おぉー!」
観客が沸く。
「やった!」
奏多も思わず声を上げた。
「いけるいける!」
栞が拳を握る。
相手も一瞬、驚いたように目を見開いた。
だが、すぐに表情を戻す。
そして後ろへ下がる。
距離を取った。
ガトリングが再び奏多を狙う。
連射。
「くっ!」
一発をかわす。
次の一発もかわす。
しかし――
「うわっ!」
弾が奏多を捉えた。
さらにもう一発。
前へ出ようとしても、弾幕がそれを許さない。
「くそっ!」
奏多は武器を切り替える。
ブレードが消え、大剣を選択する。
――しかし。
大剣が生成されない。
「……あれ?」
奏多はもう一度操作する。
それでも出ない。
「なんで!?」
視界のUIを確認する。
そこに表示されていたのは、エネルギー不足の表示。
「しまった!」
武器を次々と切り替えた。
その消費が、ここで響いた。
相手がガトリングを構え直す。
照準が奏多を捉えた。
「あっ!」
栞の声が響く。
奏多も気付いた。
だが、今からでは間に合わない。
ガトリングが一気に火を噴いた。
奏多に次々と弾が命中する。
「うわっ!」
さらに被弾。
ガトリングの弾が奏多を捉える。
視界に次々とダメージ表示が走る。
奏多の動きが止まる。
そして――
KO。
試合終了の表示がフィールドに浮かんだ。
奏多はその場に立ち尽くす。
負けた。
初めての大会。
初めての試合。
そして――初めての敗北。
相手が近づいてくる。
二人は向かい合い、礼をした。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
頭を上げると、相手が少し笑った。
「強気だったな」
「……え?」
「武器、何回も変えてたろ」
「ああ……」
奏多は自分の手元を見る。
「いっぱい使ってみたくて」
「ははっ。なるほどな」
相手はそう言って、自分の戻る場所へ歩いていった。
奏多もその背中を見送り、フィールドを後にする。
「結城くん!」
栞が駆け寄ってきた。
「惜しかったね!」
「何発か当たったのになぁ」
「うん!」
栞はすぐに頷く。
「ブレードのとき、結構よかったよ!」
「そう?」
「うん!」
二人は会場を歩きながら、さっきの試合を振り返る。
「ガトリング、弾切れにならなかったらなぁ」
「でも、武器いっぱい使ったね」
「……うん」
奏多は少し考える。
「難しいね」
負けた。
悔しい。
けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
もっと上手くなれば、もっと戦える。
そんな気がする。
「もっと練習しよう」
「うん!」
二人は受付の方向へ歩いていく。
すると――
「あれ?」
前方に人だかりができている。
「なんだろ?」
奏多が人だかりを見る。
その隣で、栞の足が止まった。
受付の近くで、何かが配られている。
キーホルダー。
栞は、それを見つめた。
「……」
奏多はまだ試合のことを考えている。
あそこで武器を変えたら。
もっと早く攻めていたら。
エネルギーを残していたら。
そんなことを考えながら歩いている。
その隣で、栞はキーホルダーを見る。
配布は続いている。
栞は何も言わない。
ただ、その表情には少しだけ複雑なものが浮かんでいた。
奏多は、まだ気付いていない。
――次回「キーホルダー」